【茨城大学工学部准教授 寄稿文④】自転車の利用環境から考えるまちづくり
タグ:
茨城大学工学部 都市システム工学科 准教授 平田輝満
水戸市における自転車利用環境整備の事例
日立市に近い水戸市でも,審議会を立ち上げ自転車利用環境の整備計画を策定しており,市道千波2号線では社会実験も実施している.
千波2号線(自動車は一方通行)は住宅街の中を通る生活道路ではあるものの,水戸駅から高校を結ぶ主要な通学路として多くの高校生に利用されている.
千波公園内の道路との接続性の影響もあり,従前は歩道内を自転車が走ることが多く,歩行者の安全がないがしろにされていました.社会実験では歩道を狭めて自転車の走行空間を生み出し,車道混在型で自転車走行位置を連続的に路面標示しました(写真6).
その結果,大半の自転車が車道の左側を走るようになり,秩序ある交通の流れが形成されるようになりました.また,歩道のない区間においては,歩行者の歩行スペースを最優先に考え,白線(外側線)の車道側に自転車走行位置を標示し,自動車とは完全に混在(追従する形)にしています(写真7).
幅員が多少広がるところにおいても車線幅は最小限で変えず,歩行スペースを最大限確保するデザインにしており,歩行者を最優先するコンセプトを示しています.
平成29年度からは自転車ネットワーク計画に沿って本格的な整備と交通指導に取り掛かる予定で,全国的に見れば他の主要都市に遅れをとっているものの,水戸市においても普段の生活から観光などにおいて安全で快適な自転車の活用が大いに推進されることを期待しています.
写真6 対策前の状況(歩道上を大量の自転車が走行し,歩行者は隅に追いやられる)
写真7 水戸市の千波2号線における社会実験.駅から高校の間の主要な通学路になっている(車道左側に自転車の走行位置を示すピクトグラムを整備.実験前は大半が歩道を通行していたが,整備後は大半が車道の左側を通行)
写真8 歩道のない区間の路面標示(自転車と自動車は混在・追従)